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2009年11月17日 (火)

森のチーズやさん

 長野県下伊那郡大鹿村の森で、チーズ作りをしている方がいます。アルプカーゼの小林俊夫さんです。小林さんは20年ほど前、スイスのベルン郊外のオップリゲン村でチーズ作りを学んできました。一夏の間,海抜1500mのアルプスの農家に滞在して、乳しぼりから、熟成まで、美味しいチーズが出来るまでを体験したのです。

                             Photo 以下、小林さんのお話を聞きましょう。
「スイスのオップリゲン村,麓の町から車で山道を上がっていくと、『アルプスの少女ハイジ』の世界が広がってきます。険しい山の斜面には色とりどりの高山植物がまるでお花畑のように咲き乱れています。夏の間は高地で放牧します。
 スイスで修行を積んだ後、伊那谷の大鹿村に戻って、チーズ作りを始めました。この辺は夏でも涼しく,雨量も他の地域に比べて少なくて,スイスの気候に似たところがあります。森に囲まれた牧場で,2頭のジャージー種,2頭のホルスタインを放牧しました。成功するかどうか不安でしたが,ともかく一からの出発でした。アルプカーゼ(アルプスのチーズ)の小さな看板をぶら下げた日のことは忘れられません。
チーズ作りは,ほとんど手作業です。朝6時から牛乳搾りに掛かります。次に,搾った牛乳を大きな鍋に入れて32℃くらいに温めます。その中に、レンネットという酵素を入れるのです。レンネットというのは,子牛の第4の胃から抽出したものです。乳以外の物を食べたり飲んだりしていない第4番目の胃が、ミルクを固めるのに最適なわけです。
 45分後、大きく固まったものを、カード切りで米粒大になるまでかき回しつづけます。かなりの重労働です。凝乳酵素の量、温める温度、撹拌する時間などはカンが頼りです。ミルクの質によって、デリケートな違いがあります。長年の経験で割り出すほかありません。
 そして分離して出来た上澄み(ホエー)は取り去り、細かく粒状になった固体(カード)の方だけをすくいます。それを濾し布に包んで型に入れるのです。板に重しをして、ひとまず作業はおしまい。  型に詰められたばかりのチーズは真っ白でお豆腐みたいです。1日に3~4個作ります。それを3ヶ月くらい熟成室で熟成させ、硬いゴーダチーズが出来上がるのを待ちます。その間、毎日一つずつ裏返して、布で何回も拭いていきます。チーズの中の100万個もの微生物を活性化させ、旨味成分であるアミノ酸発酵を促すのです。いかに熟成して美味しくするかは、この間の寝かせ方で決まります。反転作業や布で拭く作業は、いわばチーズの健康チェックのようなものです。まったく手間暇が掛かるものです。熟成室の中には、まだ白っぽいもの、少し黄色みがかったもの、オレンジ色になって強い匂いを発するものと、様々な段階のチーズが並んでいます。熟成度によって、それぞれ異なった風味を味わう事が出来ます。 出来立ての半熟製チーズ、ルブロッションのフレッシュチーズを口にすると、淡白でミルキィな味がします。もう幸福、いえ口福そのものです。
 手作りのチーズは、大鹿村の草と空気をたっぷり含んで、ここにしかない味を醸し出します。ミルクの成分には、南アルプスの光の粒子が入り込んでいるのでしょう。季節ごとの草の香り、空気中に漂う微生物の絶妙な作用、それらが味わい深い熟成を可能にするのです。5月に仕込まれたチーズは、新緑の草の匂いがほのかにします。成長著しい夏草のチーズは、エネルギーに満ちた濃い味になります。」 

   Photo_3                          チーズ作りは、複雑微妙、無限の広がりを見せるマジシャンと言えばいいのでしようか。乳製品の美味なることを醍醐味と言うのですが、まさにチーズは醍醐味そのものですね。
  南アルプスに雪が降り、大鹿村は冬支度にいそがしい。旅舎、右馬允で、ビンテージワインを傾けながら、チーズを口にする、最高のぜいたくというものです。

耳の奥で、アルプスの少女が、鈴を鳴らすのが聞こえてくるようです。

アルプカーゼ 
 電話 FAX 0265-39-2818 
 

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