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2008年2月15日 (金)

ビクトリア・・・カナダ

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    2001年10月11日,ビクトリアの朝の公園通り。港の方へとポプラ並木が続いている。見上げる大樹のてっぺんに,遅い朝日がようやく射し込んできた。オフィスへ向かう人の群れに,木漏れ日が降りそそぐ。気温0℃,外行く人の吐く息が白い。コートの襟を立て,靴音をこつこつと響かせていく。せわしげに不機嫌な顔をしている人がいない。静かな通勤風景だ。それぞれに厳しい仕事が待っているだろうに,この穏やかな表情はなぜなのだろう。
 街角の家の前にフラワーバスケットが吊る下がっている。花の街なのだ。街のレストランに入っていく人がいる。ひんやりとしたサラダ,牧場のミルク,メープルシロップがたっぷりかかったトースト,カナダの朝食だ。
 File0003                                                                        

  ビクトリアはバンクーバー島の南の端っこにある。こんな端にあって,ブリテッシュ・コロンビアの州都なのだ。アメリカとは狭い海峡湾を隔てて目と鼻の先だ。シアトル・マリナーズへ応援に行けてしまう。アメリカに近いがゆえに,イギリス風の伝統を頑なに守り続けているように見える。あの優雅な通勤風景も紳士淑女の国の美風を受け継いでいるからだろう。
 バスで北を目指す。今ころのカナダは,木の葉が色づき,鳥が歌い,サケが川を上る良い季節だ。ダンカンのネィティブ・ビレッジでは,カウチン族のセーターを着てみた。厚いごわごわした感じのセーターは,アイルランドのアランセーターとを思い出させた。トーテムポールを作っている人がいた。シカゴに住む人からの注文だそうだ。
 森をひた走りに走り,峠の見晴らしに出た。ジョージア海峡に大小の島が散らばっていた。この入り組んだ海の風景は氷河になせる技だ。青い海を眺めていると,北の国へ来たことを忘れてしまう。
 
 バスは森に入っていく。「まだサーモンは上がってこないかも知れん」とバスの運転手が言う。コートニーで降りて,川に沿って歩けば,トウヒ,シダー,モミの深い森だ。小さな黒い鳥が,美しFile0007い鳴き声をたてながら,枝から枝へと乗り移っていく。樹齢400年のレッドシダー(赤すぎ)はなかなかなものだ。川は静かなせせらぎを奏でながら流れていく。どこまでも小径は尽きない。そのときバシャと音がして,サケが背鰭を光らせた。「おっ」と歓声をあげて,みんな川に目をやった。いる,いる。遡上していくサケの群れ。バシャ,バシャ。浅瀬でもがくようにサケがはねる。「コーホーだ」。「こっちはチャム」
  4年かけてサケは海を回遊して,生まれ故郷の川に戻ってくる。川で産卵した後,サケは死に絶える。文字どおり命懸けで川を上っていく。
 どこまで行っても森が続く。森は永遠の時間を生きて,黙しまま多くを語り続けてきた。だからこそ森の中で,人はずっと考えにふけり,満ち足りた幸福を得る。
 カナダの人たちは雨でも森のトレイルを歩く。樹の魂にふれ,精神性の高みへと引き上げられていく。だから,森の中では,些細なことなどどうでもよくなる。森のスピリッチュアルな息吹を吸えば,汚れちまった心などたちどころに洗い落とされる。
 微妙な淵の曲線に沿って,せせらぎがやわらかい音を立てる。サケの群れる川に沿って,いつまでも森を歩いていたいと思った。

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