ヴェトナム ミーソン遺跡
ミーソンの遺跡はサバナの森の中にある。バスを降りて、遺跡まで、おんぼろジープに揺られてガタゴト走る。ドアをしっかり持っていないと外れる。高温多湿の熱帯の只中、窓越しに夏 の匂いが忍び込む。

煉瓦を積んだ遺跡は、ヒンズー寺院だ。ヴェトナムはインドと中国の挟間にあって、両方の影響を受けてきた。とりわけチャム族はヒンズー教を受け入れてきた。チャム族の王国がチャンパ、17世紀まで続いたというから、同一王国としては、よくもまあ長らえたものだ。
ミーソンの遺跡は、ヴェトナム戦争で破壊された。かろうじて姿をとどめていた堂塔を修復して、世界遺産に指定される。
熱帯の樹々が涼しげな影を落とし、チョウが舞い、夏草がかれんな花を咲かせる。おじぎ草の群落があって、小さな薄紫の花をつけていた。手に触れると、ひっそりと葉を閉じた。何年ぶりかの感触、われを忘れて、草とたわむれていた。嗚呼、ぼくの夏休み、絵日記に書けそうだ。
ミーソンの遺跡はヒンズー教の世界。ヒンズー教の神といえばシヴァ神。シヴァ神は、阿修羅のように三面の顔をもつ。正面の穏やかな顔立ちは慈悲深く、創造者のそれである。右の方は女性的な守護神、左は怒りに狂う破壊神。シヴァ紳はいくつもの表情を見せて、破壊と再生を繰り返す。
だからシヴァ神は忙しい。ほら「シヴァしも休まず」って歌があるじゃない。精力絶倫でないと勤まらない。遺跡の前のリンガ(男根)は、爆撃をもぶっ飛ばして、今なお屹立としている。さすがシヴァちゃん。
煉瓦の遺跡は、風雨にさらされて、苔むし、草が生い茂っている。ラテライトの赤土が、そのまま盛り上がったように、風景と溶け合っている。よじ登れば登れそうな、ぼくの夏休みの古城の石垣を思わせる。煉瓦は隙間なく積まれて、インカの石組みを思わせる。いったい誰がこのような工法を生み出したのか。
塔や祠堂の入り組み具合がほどよく、あっちに隠れ、こちらに飛び移ってみたくなる。美女と歩いていると、彼女は突然いなくなってしまう。遺跡の迷い道に、ポカーンとした静けさが残る。熱帯の真昼の幻想。
チャム族は海岸部だけでなく、川を行き来して、海のシルクロードの担い手となる。海洋国家チャンパは、時を経てヴェトナム民族に押し出され、カンボジアへと逃れていく。
暑い。ガジュマルの木陰に、へなへなと座り込む。遺跡の下で、フランスの女の子が笑いかける。








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