ブータンの森 3
ブータンの人たちは、森に対して世界で一番謙虚な国民だ。なにしろブータン国王ほど徹底した森の守護神はいない。照葉樹林の西の果てはネパールだが、乱開発でほとんど消滅してしまった。熱帯雨林の運命を見ても、ホモサピエンスは賢いとはいえない。森は人間だけのものではないという国王の卓見は、ブッシュより偉い。
ブータンでは森林伐採現場は一箇所しか見なかった。それも大変厳しい条件が付く。森が豊かだと、動物や昆虫、鳥が生息するし、林床に生える植物も多い。環境教育などと、ことさら言わなくても、ブータンの子供たちにとって当たり前すぎる。水や風の循環システムは輪廻転生そのものだ。
ブータンを旅してガードレールも交通標識も何も見かけない。未整備といえばそれまでだが、自然のままに余計なものが視界に入らない。そのほうがずっといい。揺れようと落っこちようと我慢する。
我慢するといっておきながら提案するのもなんだが、ブータンに山岳鉄道を走らせたい。ブータンは全土世界文化遺産のようなものだから、自然の一部をお借りして誰もがいけるようにしたい。自然破壊と国王は言うだろう。それより森の聖域を侵すことになると、パドマ・サンババは怒りまくるだろう。ぼくにも反論の用意がある。
ブータンの子供たちの7割は学校へ行っていないし、まじめに学ぶ大学生に就職先がない。何か助けがいる。自然破壊せず、観光化せず、知恵を出してなんとかならないかなあ。
ぼくの愛する南アルプスの森林鉄道は、ノルウェーのフラム鉄道、イギリスのスノードン鉄道に負けていなかった。命が保障されていないのが欠点といえば欠点、もっとも今は廃線になっている。スイスの登山電車やペルーの鉄道は、景色と一体となって旅のロマンをかきたてた。
谷底数百メートルの鉄橋を渡ってヒマラヤを眺める。世界一の風景だ。







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