かつて60年経った家の解体をしたとき、なおも馥郁とした香りがたち込めていました。樹は切られても第2の生を歩むのです。檜は100年間強度を増します。だから木の家は年数が経てば経つほど、つやが出て、さらに渋味が増し、高雅な香りを発しつづけるのです。どれだけ古びたときに美しくなるかです。
ハウスメーカーの家は、建ったときが一番新しくて、後は褪せていくばかりです。これでは不経済このうえありません。ファッショナブルな家、よくもって10年、もてばもったで100年の恥。遠州の古くて美しい民家を訪ねると、そのことがよくわかります。
柱を立て、梁を渡す。釘を使わないで、継ぎ手と仕口で組み上げていく仕掛けの巧みさ。構造の力強さ。棟梁の顔と技と無垢の木の香りが現場で一体となっていきます。
大工の仕事は昔からのやり方を守り通してきました。世界に誇る木造伝統工法は受け継がれなければなりません。そのためにも木の家にこだわり続けたいと思います。年季の入った職人の数だけ文化が豊かになります。職人は日本文化の技の担い手です。どこの国へ行っても伝統はきちんと守られていて、古い家を残した街がえらいと尊敬されているのです。「いまどき流行らない」と言って、どれほど日本の文化をつぶしてきたことでしょう。
家一軒建てるのに、瓦職、畳屋、建具、左官と30人からの職人に仕事が回ります。職人がいい仕事をして腕を磨き、技を弟子に伝えてきたのです。今、男の子の一番なりたい職業は大工さんだそうです。その子どもたちに期待をかけよう。






